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インドは「宗教の国」と言われる。人口の多数を占めるヒンズー教の他に、イスラム教、キリスト教に、この国で生まれた仏教など、世界の主な宗教がインドには集まっている。宗教は人々の生活に深く根差し、内面的に人々を支えている。

 

l         ヒンズー教
「ヒンズー」とは「India」の語源でもあり、ヒンズー教はその名の通り「インド教」でもある。インド人の82%がヒンズー教徒であり、パキスタン、バングラディッシュにも、人口の1割ほどのヒンズー教徒がいる。
紀元前1500年頃からインドに侵入を始めたアーリア人は、独自の神々と火を焚く祭式を持っていた。祭式を司るバラモン(僧)が強い支配権を振るったので、バラモン教と呼ばれるようになった。バラモン教は、インド先住民の持つ宗教観念や土着の神々を次々取り入れながら変化し、ヒンズー教へと発展していった。このため、ヘンズー教は多神教に見える一面がある。だがそれらの神々は、一つ一つ独立している在るのではなく、いわば宇宙そのものである唯一・至高の存在が、個々の神格の形をとって現れたものと考えられる。また進歩的なヒンズー教思想は、その至高の存在が他のどの宗教にも共通するとみなし、「いくつもの川が、流れこそ違ってもやがてひとつの大海に注ぐように、すべての宗教が目指すゴールはひとつだ」と説明している。
ヒンズー教徒は、特定の開祖・聖典を持たず、教団として組織されてもいないが、この至高の存在への信仰という点では一体になれる。また日常生活でも、カースト制度を守り、特有の儀礼・風習を続けることを法(ダルマ)にしている点で、共通性を持っている。また、宇宙に偏在するブラフマンと自我の本質アートマンとの一致に達することに、すなわち輪廻から解脱することを理想とすることを理想とする。苦行、ヨーガ、バクティ(神へ無条件に自らを委ねること)などの方法により、その境地を追求する。

l         イスラム教
7世紀にマホメットが興した宗教で、『コーラン』を聖典とし、唯一神アッラーを崇拝する。インドには8世紀頃から伝わり始めた。やがてイスラーム王朝がインドに建てられると、一時はインドの大部分を政治的に支配するほどの勢力になり、この後イスラム教は、特に北インド文化に影響を与えた。イスラム教信者のことを、インドでは「ムサルマーン」ということが多い。インド・パキスタンの分離独立後も、インドには人口の12%を占める「ムサルマーン」が住んでいる。イスラム教徒は必ずしも「剣とコーランか」という言葉で連想されるような武力で改宗を迫ったわけではなく、インドではヒンズーと融和して共存してきた面もある。外来の宗教を受け入れ、自らの中に呑み込んで平然としているのもインドの面白いところだ。また、ヒンズーのカースト制の下で圧迫されていた下層の人々が、集団で、神の下の平等を説くイスラム教に改宗していった例もある。インドのイスラム教徒は外来の人種でなく、そのほとんどがもとからインドにいたインド人なのだ。

l         シーク教
パンジャーブ人であるグル・ナーナク(Guru Nanak, 1469-1539)を開祖とし、イスラムの影響を受けて、ヒンズー教を改革した宗教。絶対真理としての神を崇拝し、偶像礼拝、カースト制度を否定し、人間の平等を唱える。
第五代グル(導師、教主)アルジュンの頃から、ムガル帝国による激しい弾圧を受け、信徒を軍団化して対抗。19世紀初めには、ランジート・スィンの下で、シーク王国を築いたが、イギリスとの戦争に敗れた。信徒総数は全体の2%ほどだが、パンジャーブを主に全地域でビジネス、交通、運輸、軍関係の仕事に活躍している。頭髪や髭を切らない掟を守るために、束ねた長髪にターバンをかぶり、黒々と髭をたくわえる姿が特徴的である。アーリア人の血が濃く、肉食であるため体格が立派な人が多い。タバコを決して吸わず、少数ながらも信徒の結束は非常に強く、インド社会の中では得意な存在。

l         ジャイナ教
仏教とほぼ同時期に成立した宗教で、マナーヴィーラMahavira(紀元前599-527年頃)を開祖とし、マハーヴィーラの前には23人の聖人がいたと伝承されている。行為が業を生み、輪廻に束縛されると考え、厳しい戒律と苦行を守って解脱に至ろうとする。そのためには不殺生・無所有が強調される。空衣派の無所有の極み、全裸で暮らし、修行に励む。信徒数は0.4%ほどだが、信用があるため商売でも成功する。その収入を寺院にも寄進するため、ジャイナ寺院は金のかかった建物が多い。

l         キリスト教
イギリスによる植民地化により広まったのではなく、1世紀にシリアの聖トーマスによりキリスト教がインドに伝えられた。その後16世紀にポルトガル人によって伝えられたカトリックとも異なる系統のキリスト教がインドには残存している。キリスト教信者は人口の2.4%で、南インドのケーララ、タミナルナードゥ、ゴア、西インドのマハーラーシュトラなどの州に多い。

l         仏教
「ブッダ」とは「覚った人、覚者」という意味で、ブッダは今から2500年前ほど前、ルンビニー(現ネパール領)でシャーキャ(釈迦)族の王子として生まれた。名はゴータマ・スィッダールタ。人生の苦悩を解決する道を求めて出家し、苦行を経て静かな瞑想に入り、ブッダ・ガヤーの菩提樹の木の下で覚りを開いた。生ある限り、覚った真理を人々に伝えることを決意し、バナーラス郊外のサールナートで初めて法を説いた。多くの人々を教化し、80歳の時、説法の途中で病気にかかりクシーナガルで静かに入滅した。信徒数は全人口の0.7%。ヒンズー教においては、ブッダはヴィシュヌ神の9番目の権化とされている。






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